人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「孤高のメス」

100621「孤高のメス」_c0075706_1833117.jpg 港のある片田舎。末期の肝硬変で助かる見込みのない市長がいる一方、交通事故で脳死状態の息子を抱える母親がいる。幼い息子の死を無駄にしたくないと悩む母親。そして、新しい命として臓器移植を願う母親を前に、若い医師は重い決断をする。しかし、当時、日本はまだ臓器移植が認められておらず、この手術をすることは即、犯罪を意味する。

アメリカの大学で新しい技術を身に付けた当麻医師は、幼い頃に手遅れで母親を亡くしたことがトラウマとなって、患者の命を救うこと以外には何の興味もない純粋な人物。事後のことは自分が責任を取ればいいという気持ちで、長時間に及ぶ生体肝移植に踏み切る。手術は成功し、情状酌量で起訴を免れた当麻は病院を去っていく。

自分自身、現役の看護婦でありながら、病院をたらいまわしにされた挙句、急死した浪子の葬儀に、近所に住む幼稚園時代の静先生と参列した新米医師の一人息子弘平は、母親の遺品の中に一冊の日記を見つける。そこには、母親の看護婦時代の悩みや希望が克明に綴られている。

最低の技術しか持ち合わせないのに、出世だけには異常な情熱を燃やす俗物、野本医師にいい加減を愛想をつかしていたところに、新任の若手医師が登場する。純粋な当麻の下で看護婦としてオペに立ち会えることに、次第に歓びを見いだす浪子。そして市長の手術に立ち会い、チームワークが奏功して手術は大成功、更に当麻に看護婦としての手際良さを褒められ、やがて当麻の存在を意識するようになった直後の当麻の異動。去り際に、当麻に万感の思いを込めて礼を言うが、自分の気持ちを万分の一も伝えられないもどかしさが浪子には残る。

今日は、その新米医師、弘平が新任の挨拶にこの「さざなみ市民病院」の病院長に挨拶にやってくる。病院長の帰りを待つ間、何気なく病院長のデスクにある写真の1枚に目をとめると、そこには出発直前に撮影された母浪子と並んで映っている当麻の姿が。

淡々と難しい手術をこなしていく当麻医師を演じる堤 真一がいい。もともと愛想のないタイプだけに、地で行っている感じだ。また毅然さを感じさせる視線が素晴らしい。一方、浪子を演じる、意地の強さと同時に弱さやもろさを感じさせる表情の夏川結衣がたまらない。手術中の演技は、専門家から長時間の指導を受けたと思うが、迫真の出来栄え。秀作である。

#31
by grappa-tei | 2010-06-21 19:52 | 映画


<< 化粧する女 JAZZ VOCAL JAMB... >>