100323 ヒューマントラスト有楽町

かなりよく出来た山岳アドベンチャー。
「山」(1955),「アルピニスト・岩壁に登る」(1959),「アイガー・サンクション」(1975)、
クリフハンガー(1993)、バーティカル・リミット(2000)など、
今も印象に残る山岳もの、或いはつい最近の邦画「剣岳」と比べても、
極めてインパクトの強い作品と言えそうだ。
登山史に残る悲惨な実話をベースに作られた作品。
1936年と言えば、ナチスがすっかり台頭、
そして「前畑、ガンバレ!」のベルリン・オリンピックの年。
アイガー北壁初登頂に成功すれば、オリンピックの大舞台で表彰というナチの宣伝で、
我こそはと麓の村クライネ・シャイデックに集合した欧州主要各国登山家の精鋭たち。

嘗てはこんな楽しいひと時もあったのに・・・
その中に、若いトニーとアンディーの姿も。
これまでいくつかの登頂に成功して怖いものなしという精神状態の二人。
7月のある晩、真夜中の月明かりの中、自信に満ちて出発した二人だったが、
数十時間後、予想もしない悲惨な運命が待っていようとは!

Kleine ScheideggのHotel Des Alpesから一行の姿を追う。中央右寄り半袖がルイーゼ。
麓のHOTEL DES ALPESには、どのチームが初登頂に成功するか、
世紀の瞬間を記事にするべく陣取る各国メディア。
大望遠鏡で頂上に向かうパーティーを捉えながら、
今や遅しと、早くも祝賀ムード。
その中に、トニーの幼馴染で嘗ての恋人だったルイーゼも、
ベルリンの新聞社のカメラマンとして、上司と共にホテルに滞在中。

とうとう二進も三進も行かぬ状況に。←が自然にリーダー格になるトニー。
ところが、突如天候が急変。猛吹雪に呑みこまれてしまうパーティー。
絶望的な状況で、ついに・・・。
★
何故失敗したか、原因はいろいろ考えられる。
天候不良が最大の要因には違いない。
当時の気象予報のレベルがどの程度か知らぬが、
翌日の天候が分からないというのも聊か腑に落ちぬ。
次に、急追してきた墺太利隊の二人との絡みが大きい。
結局、先行するドイツ隊と同じルートを辿る彼らの上に、
トニーが足を滑らせたことによる落石が墺太利隊の一人の頭に命中、
このことがその後の運命を決定づけることに。
他にも帰路のザイルの確保をしなかったことや、更には救援隊がかけつけたのに、
ザイルの長さが十分でなかったために、後一歩というところまでこぎつけながら、
みすみすルイーゼの眼前での悲劇を招くという後味の悪さを残す。
ルイーゼの上司はスクープにしか興味のない俗物で、
人の生き死にという極限状況にも記事の書き方を気にするような言動に、
さすがのルイーゼもキレる。そして最後に言い放つセリフ
「もう結構です。あなた方のような人は!」が特に印象に残る。
★
ほぼ全体の半分に亘って、猛吹雪で進退に窮する二つのパーティーの
凄まじい奮闘ぶりをカメラが捉えるが、
これが想像を絶する映像と音響で、正に手に汗に握りっぱなし。
もちろんCGを使っての撮影だろうが、
それをまったく感じさせない映像創りは見事だ。
★★
結局、初登頂はそれから2年後の1938年、奇しくもドイツ隊と墺太利隊により達成。
それをナチがうまく宣伝材料にして墺太利併合したと字幕に出る。気分悪し。
また、クレジットの流れる画面にかぶせて当時の流行歌とおぼしき歌が、
「♪・・・前進あるのみ。向かう先には幸福が・・・♪」と。ウーム。

この後、右手の手袋を吹き飛ばされてしまう。それでも最後までがんばったトニーも・・・。
とてもCG映像とは思えぬのだが
#15(画像はALLCINEMA on lineから拝借しました)